大阪リアルオーナー共同組合 情報誌「スマイル」平成23年10月号寄稿文

情報誌「スマイル」平成23年10月号寄稿文

管理会社についての考察

「おおや倶楽部」大阪生野共同住宅組合 組合長 糸川康雄
ORO(大阪リアルオーナー共同組合)の福谷代表理事とは、十年来のお付き合いで同業者組合のお仲間として、日頃よりお互いに切磋琢磨して参りました。
この度は、管理会社についての寄稿依頼を受け、過去OROの情報誌で度々取り上げられた管理会社の記事から、福谷氏の取り組みの手助けが出来ればと、私なりに過去の経験を踏まえ纏めてさせていただきましたので、大家さんの一助になればと思います。
まずは管理会社について考えた時、仲介管理と物件管理がある事に気付いておられる大家さんがどれくらいおられるのでしょうか?
仲介管理には、入居者募集・家賃集金・退去立会い・滞納督促やその他問題解決などの業務、建物管理には、巡回・清掃・設備の保守点検などの業務があります。
皆さんが一般的に言われる管理の問題点は、そのほとんどが仲介管理に関する問題なので、ここでは仲介管理の問題点について見て行きましょう。
当組合は新規加入時点の物件訪問や既存組合員さまへの巡回訪問、また2ヵ月毎の懇談会などで、大家さんの悩みの解消に努めておりますが、しばしば管理会社の不満を聞く機会があります。
具体的には、リフォーム済みで内見が可能なお部屋と言う事で、見せていただこうと入室しますと、異臭が鼻をつくことが往々にしてあります。
原因は排水トラップの封水が切れていて、ひどい場合はトイレのドアを開けると、排水管から小蝿の大群に襲われた事も一度や二度ではありません。
また、リフォーム自身出来ていない事もあり、ゴキブリの死体が転がっていたりします。
こんな状態でお客様に内見して貰っても、決まるわけがありません。
管理会社の定期巡回が名ばかりになっている現実があります。
最近の傾向としては、内見用のスリッパ・物件案内・メモ・筆記具・メジャー・芳香剤や各設備へのPOPなど、内見者への至れり尽くせりのサービスをされている例も有り、その差に唖然とします。
また入退去時のリフォームや、外回りの改装、設備の補修などにも不満が出ています。
見積もりを見せて頂くと、明らかにおかしい点が見受けられます。これは言わずもがなで、
もともと施工する業者の見積もりに、管理会社のマージンを乗せている訳ですから、高くなっても当たり前ですし、尚且つ複数業者による見積もり検討がし難い状況にもあります。
 
また問題処理についてですが、管理会社を入れていて滞納額が複数戸で数十万〜数百万円もある例が有りましたし、滞納以外の問題でもレスポンスの悪さに不満が出ています。
オーナーへは勿論、居住者へのレスポンスはどうか?
24時間無休の連絡体制 休日や深夜のトラブルに対処できるか?対応の悪さが退去につながっているかもしれません。
管理会社の担当者に能力が有った場合でも、その担当者が抱える物件数から考えると、自然にレスポンスが悪くなる状態で、手が回らなくなるのも当然かなと思います。
 
また、管理会社の有資格者の数はどうでしょうか?
私自身、組合員の皆様のご相談に乗る機会も多く、その為に従来より取得していた宅建主任者に加えて現在では、プロパティーマネジャー・ファイナンシャルプランニング等の資格を取得していますが、まだまだ勉強不足で賃貸住宅経営には幅広い能力が要求されます。
ところが管理会社はと言うと、多店舗展開している仲介業者が兼業でする場合など、従業員の入れ替わりが頻繁で、その店舗に宅建主任者が一人しかいない例を見ても、その能力に疑問点が有るのは容易に分かると思います。
また仲介会社が管理会社の最大の問題点は、はるか以前の貸し手市場ならいざ知らず、現在は出来るだけ長期にご入居いただく事が、賃貸経営安定の必須条件ですから、仲介業者は入居者が入れ替わらないと収益になりませんし、その際の仲介は勿論自社の店舗となってしまうので、客付けが良好な店舗なら問題は表面化しませんが、客付けが悪かったり、その店舗の担当者との関係が良くなかったりすると、万年空室状態と言う事も有り得ます。
また客付けの担当者は、その入居者の条件交渉の代理者でもあります。
入退居や外回りのリフォーム工事までさせていれば、それは見積額にも反映して、明らかに大家さんとの利益相反関係となっている事に気がつくべきです。
また、管理専業者の中には、高い能力を持った方も居られるでしょうが、この業界自身が発展途上で、そんな担当者に当る確立はまだまだ低いと思います。
 その他、過去に倒産などで敷金や家賃の預託が流用され、大家さんに返還されなかった
例や、毎月の入金などの報告書、賃貸契約書などの重要書類の提出さえも守られない例、大家さんには空室の報告をして、実際は入居者がいた例、また管理会社自身が作成した管理契約が守られ無い為に再三是正要求したが、これにも対応しないので、ついに管理会社を変更しようとすると「物件を空室だらけにしてやる」と恫喝する悪質管理会社も有り、杜撰な鍵管理も報告されており、管理会社社員による入居者への犯罪行為などなど、書き出すと枚挙に暇がありません。
また、近年の借り手市場を考えた時、もしオーナーさんに良い空室対策があっても、なかなか管理会社にその意向を反映させるのは難しく、自分の物でありながら、自分の物では無い様な、もどかしさを感じた大家さんも多いのではないでしょうか?
 
また管理会社には、日々の管理業務の他にもオーナー個々の事情も把握し、物件の過去から現在・将来の市場性を把握し、長期修繕計画やスクラップ&ビルド含めた的確なアドバイスなど、重要な業務が有ります。
それでは、どうすれば良いのかと考えた時、まずはそんな幅広い能力の必要な管理を、一括して受託出来る所は数少ないと思います。
当然ながら、自分の大切な物件を自分以上に大切に管理してくれる業者はなかなかおりません。大家さん自らがコーディネイトして仲介は仲介業者、建物の維持管理は清掃等の管理業者、建物設備は設備のメンテナンス業者、法的な問題には法律の専門家とそれぞれ別に委託して、無駄を省いて、自分自身が納得する経営を目指すほか無いと考えます。
それでも、高齢や兼業や物件との距離が離れているなど、どうしても管理会社を頼まざるを得ない事があるでしょう。
その際の管理会社の選び方としては、まずは管理専業者をお勧めします。
また、(財)日本賃貸住宅管理業協会への加盟業者をお勧めします。加盟業者なら、先述の例にあった倒産時などにも預かり金を保証してくれます。
また、その管理会社が実際に管理している物件を複数見学されたり、その物件の大家さんや入居者の評判を聞かれる事も大切ですね。ただし、管理会社に任せても任せ放しでは駄目です。その場合でも常に賃貸経営の情報収集だけは怠らず、管理会社と対等か、それ以上の能力維持を図り、自分の物件の置かれている状況を把握し、状況が悪ければ、管理会社とコミュニケーションをとって、最良の状態を維持出来る様に考えましょう。澱んだ濁り水にならない様に努めて下さい。
 昔ながらの建てれば満室の時代は、遠い過去に過ぎ去ってしまいました。大家さん自身も賃貸経営を勉強して、ご自身の資産を大切にし、共に賢い大家を目指しましょう。
最後に、私個人はあまり行政を頼りにしていませんが、参考の為に国土交通省の管理業者登録制度の概略を紹介します。(以下、不動産法務サポートオフィスより抜粋)
国土交通省は、賃貸住宅管理業者やサブリース業者を対象にした登録制度の概要を明らかにしました。登録の対象となるのは、

  1. 家賃・敷金等の受領事務
  2. 契約更新事務
  3. 契約終了事務

のいずれかを行う事業者です。
登録業者には以下のルールが課せられます。

  1. 管理委託契約等の重要事項説明
  2. 管理委託契約等の締結時の書面交付
  3. 貸主に対する定期的な管理事務報告
  4. 敷金精算の算定額の交付
  5. 財産の分別管理
  6. 帳簿の作成・保存
  7. 従業者証明書の携帯
  8. 誇大広告の禁止
  9. 一括再委託の禁止 等

これらのルールに違反した場合には、国土交通省から指導等を受けることがあり、場合によっては登録が抹消されることもあるとのことです。
登録自体は任意ではありますが、業者を選ぶ際の判断材料になっていくことは間違いないですので、多くの業者が登録することになると思われます。
国土交通省では、この登録制度を平成23年度内に施行する予定にしています。
・・・・長文をお読みいただき、ありがとうございました。

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